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エピソード3 「無職、ユニオンに出会う」~元テレビ番組制作会社ADの未払い残業代請求ストーリー~

未分類
09 /13 2018
~元テレビ番組制作会社ADの未払い残業代請求ストーリー~

エピソード3
「無職、ユニオンに出会う」

 2018年4月に「ミッシング・ワーカー」を卒業し、正式な失業者になる為に人生で初めてハローワークに行きました。ハローワークでは、まず初めに、雇用保険の受給をする為の手続きを行いました。

 雇用保険とは、失業時に受け取ることができるお金のこと。とは言っても、失業したらすぐにそのお金が受け取れるかと言えば、そうではありません。退職理由で、異なります。自己都合退職の場合、3か月の給付制限が適応されます。その為、雇用保険の受給申請をしてから長い間待たなくてはなりません。しかし、会社都合退職の場合、この3か月の給付制限が適応されません。しかも、たとえ自己都合で退職をしても、退職後、ハローワークに離職理由訂正の申し立てができ、会社都合に変更できます。会社都合に変更できる要件ですが、その項目の中には、長時間労働、パワハラがあります。

 約120社のテレビ番組制作会社で構成されている全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)が2017年6月に実施したアンケート調査では、ADの平均残業時間は過労死ラインの80時間を超えていました。
(共同通信:https://this.kiji.is/390423736056824929?c=39546741839462401
 ということは、テレビ番組のADであれば、ほぼすべてのADが会社都合で退職できるということです。このブログを読んでいるADの皆さんには、自分の体と相談しながら、会社都合退職という選択肢があることを頭のどこかに入れてもらえればと思います。

 このように、ハローワークに行ってから、雇用保険に関して少し詳しくなった僕は、当然のことながら、離職理由訂正の申し立てをしました。

 そして、その後、ハローワークの職業相談をしました。そこで、前の会社の嫌なところをすべて話しました。
 すると、、、

相談員「えっ!?残業時間が200時間近くあり、給料が20万円程度なんですか?」
僕「そうなんですよ。体力的にきつくて。」
相談員「いや、そうじゃなくて、あの・・・給料がきちんと払われてないと思いますよ。」
僕「えっ・・・そんなことあるんですか!?」
相談員「時給換算して、最低賃金下回っているので違法の可能性が高いです。」
僕「あー、確かに、そうですけど。」
相談員「一度、労働基準監督署に相談に行くのをおすすめします。」
僕「・・・そうですね。ありがとうございます。」

 とまぁ、こんな風に、違法の可能性があると指摘された僕ですが、半信半疑でした。というのも、給料をまともに支払わない会社のイメージは、倒産寸前の貧乏会社のイメージを持っていたからです。しかし、クリエイティブネクサスで働いていて、そんなこと思ったことがありませんでした。それは、会社のビルが自社ビルだったり、たまに高級な焼肉やお寿司屋さんに連れて行ってもらったり、自主映画を制作してたりと、貧乏な会社とは到底思えませんでした。だから、本当にそんなことあるのかなぁ~と思ってました。
 半信半疑ではありましたが、一応と思い、労働基準監督署に後日、相談してみました。
 すると、、、

僕「すいません。給与明細のことでお伺いしたいのですが・・・。」
相談員「はい。どうぞ。」
僕「残業時間が200時間近くあり、給料が20万円程度なんですが、これって、違法ですか?」
相談員「そうですね、、、ちなみに、お仕事は何ですか?」
僕「テレビ番組制作会社のADです。」
相談員「あー、そうですね。違法ですね。残業代が払われてないですね。」
僕「いや、残業代はみなし残業手当という形で支給されていました。」
相談員「そのみなし残業手当の超過分が支払われていないということですね。ちなみに、何時間分のみなし残業手当ですか?」
僕「えっ!?・・・どういうことですか?」

 その後、詳しく説明してもらうと、僕はみなし残業手当という形で残業代を受け取っていました。ここで言う、みなし残業とは、実際の残業の有無に関わらず、あらかじめ給与の中に一定時間分の残業代が含まれて支払われる制度のことです。ここで重要なのは、一定時間分の超過分に関しては別途支給しなくてはならないということ。つまり、会社は残業の有無に関わらず、しかも、超過分は別途支給しなくてはいけないということになります。このみなし残業を会社は悪用していました。
 恥ずかしいことに、ハローワークの相談員に指摘を受けるまで、僕は、給与明細のみなし残業手当を理解せずに給料を受け取っていました。初めて給与明細を貰った時に、安いとは思っていましたが、こんなものなのかなと思い込み、その結果、騙され、搾取されていることも気づかずに、僕は長時間労働をしていたのです。
 これを知った時、まず、騙され、搾取されていた自分自身に対して、なんて情けないんだ!と悔しい思いで胸がいっぱいになりました。それに、毎日顔を合わせて働いていた僕を平気な顔して、搾取していた管理職や経営者に対して激しい憤りを覚えたのと同時に、僕は、この事実を簡単には受け入れられなかったです。必死に働いている社員に対して、どうしてそんなことが出来るのか?自分より何十個も年下の人間に、なぜそんなことができるか?現場で働く人間を搾取して成立していたあの会社の気持ち悪さに、僕は、人生で経験したことがない、胸のえぐられ方をしました。
 そして、その場で残業代請求をすることを決意し、相談員にそれを伝えました。

僕「そうだったんですか・・・。騙されてたんですね、僕。残業代を請求します!泣き寝入りなんて、絶対にしません!」
相談員「そうですか。わかりました。しかし、まずは、香川さんご自身でやって下さいね。それでも、会社が支払わなかった場合、労基署から会社に言いますね。」
僕「えっ、残業代請求って、労基署がやってくれるんじゃないんですか?」
相談員「そうなんですよ。まずは、香川さんご自身で、個人的に請求してください。そういうルールなんです。すいません。」
僕「そうですか、、、そういうルールなんですか、、、わかりました。」

 残業代請求をその場でしたかった僕ですが、労基署のルール的に、出来ないとのことだったので、一旦諦めました。そして、家に帰った後、みなし残業や残業代請求について、色々とネットで調べました。すると、あるYahoo記事(NPO法人POSSE代表・今野氏による記事:https://news.yahoo.co.jp/byline/konnoharuki/20170625-00072523/)にたどり着きました。驚くべきことにそこに書かれていたのは、テレビ番組制作会社の求人詐欺と未払い残業代について。「えっ!? これ、俺じゃん!」と思わずパソコンにつぶやくほどの内容で、興奮の為か、パソコン画面がいつも以上にまぶしく、文字が読みにくかったのを今でも記憶しています。そして、その記事の最後に書かれている労働相談の窓口に、藁にもすがる思いで電話をしたのが約3か月前の話。これが僕とブラック企業ユニオンとの初めての出会いです。



~次回、労働組合加入編~
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裁量労働制を違法適用していた建築設計事務所・プランテック総合計画事務所と団体交渉中です!

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09 /12 2018
 ブラック企業ユニオン/裁量労働制ユニオン(総合サポートユニオン)では、建築設計事務所・プランテック総合計画事務所(以下、プランテック)と団体交渉をしています。同社に勤務するAさん(20代女性)が、長時間労働の改善と残業代の支払いなどを求めて団体交渉中です。

●1日8時間のみなし労働時間なのに、20時間以上の労働が頻繁に

 同社では、1日8時間をみなし労働時間とする専門業務型裁量労働制を、「建築士の業務」に従事する従業員に「適用」していました。同社で建築設計業務を行なっていたAさんもその一人です。
 裁量労働制は、労働の仕方について裁量がある労働者にのみ適用されることになっており、出勤時間にも裁量があるはずです。ところが、Aさんは月100〜150時間程度の残業が頻繁にあり、深夜3〜4時まで職場に残って仕事をしたり、朝9時ごろまで徹夜して帰宅し、そのまま昼にまた出勤したりすることも珍しくありませんでした。同社の1日のみなし時間は8時間を大幅に超え、1日20時間以上働くことも多々ありました。
 Aさんは過酷な長時間労働に追い込まれた結果、精神疾患に罹患しています。そんな折、Aさんはユニオンの存在を知り、団体交渉を決意しました。

●裁量労働制を無効にさせ、勤務記録どおりの賃金支払いを認めさせました!

 ユニオンでは7月に団体交渉を申し入れ、すでに2回の団体交渉が行われています。これまでの団体交渉で、ユニオンはプランテックにいくつかのことを認めさせています
 まず、裁量労働制が無効であるとして、これまで裁量労働制を適用されていた同社の全従業員に対して、1日8時間のみなし労働時間を超える残業代の支払いを認めさせることができました。
 次に、この残業代の算出方法ですが、Aさんについて、勤務記録に記載された出勤時間から退勤時間のうち、休憩時間を除いた時間の全てを労働時間として認めさせています。
 例をあげると、Aさんは今年4月のある日について、朝10時半から28時半(翌朝4時半)まで勤務しています。この日の休憩は1時間だったため、17時間分労働していたことが認められ、8時間の就業時間の賃金とは別に、9時間分の残業代が追加で認められたことになります。
 一般的に、裁量労働制が無効になった場合に、会社側が勤務記録の時間を「労働時間ではなく在社時間」などと開き直り、「労働していない時間もあるはずだ」「裁量労働制のはずだったのだから、自由に休んでいた時間もあるはずだ」などと強弁することがあります。この点について、プランテックが全て労働時間として認めたことには大きな意義があります。
 さらにユニオンでは、時効のある2年間分の支払いを認めるように追及しています(もちろん、2年間の支払いを認めず、数ヶ月分で値切るようなことがあれば労働基準法違反となりますので、当然のことなのですが)。

●プランテックの従業員・退職者の皆さんへ

 さて、今後数週間の間、プランテックの従業員の皆さんに注意してほしいことがあります。プランテックはこれから、裁量労働制が適用されていた他の従業員の方々に対しても、過去の裁量労働制を無効として、支払われるべきだった残業代について調査を実施するとしています。会社側の発言に従えば、調査期間は1ヶ月程度が予想されます。
 ただし、残念なことに、あくまでも一般的なケースですが、こうした全社的な残業代支払いの際に、会社側が本人の意思を尊重しない調査や面談を行い、残業代を大幅に短めに支払うことに、無理やり同意させてくることが多々あります。
 具体的には、「そんなに長くは働いていなかったはずだ」などとして、勤務記録の時間通りの労働時間を認めず、1日あたり数時間分を差し引くことに応じるよう迫ってくる可能性があります。
 同様に、時効期間の2年間分ではなく、2、3ヶ月から半年間程度だけの支払いで妥協するように強制してくる可能性も高いです。
 また、一般的には、債権放棄の同意書を結ばせるなどして、後から追加で残業代請求を断念するように約束させてくる企業もあります。
 こうした状況に陥る前に、ぜひユニオンへの相談をお勧めします。前述のとおり、ユニオンの団体交渉ではすでに、Aさんに対して、勤務記録どおりの労働時間を認めさせており、2年間分の残業代支払いを求めています。また、現職の従業員だけでなく、退職者であっても、過去2年間分の残業代請求は可能です。ぜひ相談してみてください。
 加えて、ユニオンでは、裁量労働制の悪用に対する歯止めや、長時間労働に対する改善策などを同社に求めていきます。
 一緒に、会社に対して支払われるべき残業代全ての請求をし、長時間労働を是正することで、プランテックを働きやすい企業にしていきましょう。

●Aさんからのコメント
 最後に、今回立ち上がったAさんからのコメントを紹介します。

 会社に対して疑問を抱き、不満をお持ちの方はぜひ一度相談してください。
 私は家族や友人に、会社の実情を中々相談することができませんでした。それは自分が通常ではあり得ないような労働時間で働き、またその対価を支払われないことがあまりに恥ずかしかったからです。内部の人々にはこれが当たり前だと言われ続けたため、騙し騙し働いて来た結果、自分はまだ大丈夫と思って行った病院でその日に即入院を勧められました。
 従業員の方で、昔よりマシになったから、昇給率は他の会社よりいいから、建築設計事務所はどこも一緒、会社の人との仲を壊したくないからと騙し騙し働いている方はいませんか?
 マシになったとしても、会社が裁量労働制を悪用し、払うべき対価を支払っていないのは事実です。
 昇給率は他の会社よりいいからといって、もらうべき残業代を換算せず目をつむっていませんか?
 本当にどこの会社も同じでしょうか?自分より悪条件で働く同業者を見て心を落ち着けていませんか?主張して当然の権利を主張し、それで壊れるような仲に固執すべきでしょうか?
 会社は、労基署の調査で裁量権に関わる調査について作業内容を一部しか明かさず、ごまかすような対応をとっています。
 毎回、やり取りの度に「真摯に対応します」と会社側は文章で書いていらっしゃいますが、上記のような誤魔化しをしている限り、真摯とは到底言えませんし、会社の改善は期待できません。
 会社に対して疑問を抱えて働き続けることは遅かれ早かれどこかに無理が生じます。
 少しでも多くの人がこれを読み自分の会社を見つめ直す機会が持てることを祈っております。

長時間労働、休憩未取得等の改善に向けて、ヤマト運輸と団体交渉しています!

活動報告
08 /03 2018
ヤマト交渉画像

私たちは、昨年から、ヤマト運輸と労働環境改善に向けた団体交渉を行っています!

◆最近の状況と報復人事

ヤマト運輸は、昨年、「働き方改革」を掲げ、労働環境改善に取り組んでいましたが、現在でも、未だに社内では、長時間労働や1時間の休憩が取れないというような実態があります。

それについては、私たちは継続して改善をするよう団体交渉で求めつつ、労働基準監督署へ改めて通報をするなど、行動を続けています。

しかし、その過程で、この度、昨年の夏から団体交渉を継続してきました組合員に対し、会社は、最低ランクの報復的人事評価をしてきました。

それについて、なぜそのような評価にしたのかを、今週の団体交渉で、会社人事担当者や直属の上司に問いただしましたが、回答は二転三転しその評価基準も明確に答えられませんでした。

例えば、最初に上司は、「1ルートしか回れていないから」ということを評価理由に挙げていましたが、実際には、評価期間においては、Aさんは2ルートを回っており、事実が異なるということを指摘するとしどろもどろになるといったやり取りがありました。

人事評価によって、賃金も下がるなど、Aさんは不利益を受けますが、会社はその評価の根拠も答えられないという、ずさんな対応をしており、そのような対応について、私たちは許すことができません。

私たちは、今後も、継続して、違法状況の改善や、報復行為の撤回等を求めて戦っていきます!

◆組合員の想い
①組合員Aさん
 
私はヤマト運輸に勤めて21年になります。ここ数年の異常な勤務で退職を考えていました。しかし年齢的に転職は難しく諦めかけていたのですが、ユニオンの方と話して「会社と改善に向けた交渉をする権利が労働者にはある」と知りました。

絶対服従のヤマト運輸と交渉なんて、最初は不安しかありませんでした。しかし、これまで、堂々と団体交渉を進めることにより、団体交渉の前後では、私個人の労働環境は驚くほど改善されました。

ただし、私の目標は、あくまで、ヤマト運輸にすっかり定着した「ブラック企業」のイメージを完全に払拭することです。実際まだまだ社員軽視の企業風土は根深いものがあり、特に、法律や社会倫理よりも自分の保身に走る管理者が溢れているという事実を団体交渉を通して会社に認識してもらい、改めてもらいたいです。そうしてやっと、ブラック企業のイメージを払拭することが出来ると思うのです。

 私一人では、一瞬で会社に捻り潰されて終わりですが、ユニオンの心強い仲間達がついていますので、何の不安もなく、会社と交渉を繰り返し、少しずつでも会社を変えていけると思います。

ぜひ、ヤマト運輸、そして物流業界で労働問題を抱えている方は、ブラック企業ユニオンまでご相談ください!一緒に労働環境改善に取り組みましょう!

②組合員B

 今回は4度目の団体交渉でしたが、あいも変わらずヤマト運輸はユニオンの質問事項に書面回答をしない、話をはぐらかす、知らない、答える必要はない、などと不誠実な対応を続けています。ヤマト運輸ほどの大企業が労基法違反やコンプライアンスに反する問題を認識しながら、このような対応を取り続けるとは1カスタマーとしても悲しいですし、なにより許せません。
 
 交渉している在職組合員はただ「誇りをもってお客様に向かい合いたい、今までみんなで育ててきたヤマト運輸というブランドを守りたい、そして長時間労働や嫌がらせのない職場でプライドを持って仕事をしたい」と心から求めています。だからこそ、勇気を持って立ち上がり、ヤマト運輸の抱える様々な問題を会社とユニオンに入って仲間と共に闘い、ヤマト運輸にもその自分の思いを理解させ会社を改善しみんなが働きやすい会社に変えようと闘っています。

もしこれを見ているヤマト運輸の幹部の方がいたら私は、「あなたは恥ずかしくないですか?こんな状態であなたの仕事に誇りを持てますか?」と問いたいです。

私たちは仲間の痛みを自分の痛みとして感じ、共に怒り、これからもユニオンの仲間みんなで闘っていきます。また、一人でもおおくのヤマト運輸で苦しい、辛い、悲しい思いをされている方が私たちと共に立ち上がればさらに大きな改善ができます。そのような方がおられたら、無料労働相談電話に気軽に電話してください。話すだけでも楽になることもあります。みなさまのご理解とご支援を組合員として心よりお願い申し上げます。

エピソード2 「行方不明の労働者」 ~元テレビ番組制作会社ADの未払い残業代請求ストーリー~

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08 /03 2018
 2017年10月に株式会社A社を退職した翌日から、心身ともに疲弊していた僕は、最近話題の「ミッシング・ワーカー」になりました。「ミッシング・ワーカー」とは、求職活動をしていない為、ハローワークなどの公的機関が把握できていない失業者のことで、労働市場から行方不明の人を指します。日本語訳は、「行方不明の労働者」。

 「うん、、、なんか、かっこいい。」それが、僕がこの言葉を初めて聞いた時の感想でした。ニートより罪悪感がないし、響きもかっこいいので、失業中、僕はこの言葉に何度も救われました。間違いなく、僕の中の2018年流行語大賞です。

 こうして、会社を退職した翌日から「ミッシング・ワーカー」になった僕ですが、実はそれだけにとどまらず、ガチの行方不明になりました。AD時代、メールや電話に、いつでも対応できるように、常にスマホを握りしめていた僕は、スマホのバイブ音が怖くなっていました。バイブ音が鳴る度に、僕の心臓はそれ以上に震えていました。その結果、退職後、スマホの電源を切り、SIMカードを抜いて、ベッドの下に放り投げ、生活をしていました。視界にスマホが入ってこない。いつになってもスマホからバイブ音がしない。スマホから自由を勝ち取った僕は、好きな時に起き、好きな時に食べ、好きな時にネットをし、好きな時に寝る、そんな健康で文化的な最低限度の生活をしていました。しかし、今の日本では、それは行方不明になることを意味していました。

 あの日のことは、一生忘れないでしょう。そう、スマホを再び手に取った日です。実は、スマホから距離を置いて、1か月たった頃、僕の方からスマホのことが気になりはじめていました。あんなに嫌いだったのに。あんなに僕の心臓を震えさせていたのに。何故かそこには、あのバイブ音をもう一度聞きたい僕がいました。しかし、もうスマホに支配されたくない僕は、そこから意識してスマホと距離を置くことにしました。2017年の年末頃にはもう、嫌々、スマホの無い生活をしていました。そして、2017年12月31日大晦日、年越しのカウントダウンと同時に、僕は再びスマホを手に取ったのです。

 電源を入れてみると、大量のラインのメッセージが送られてきました。主に、前の会社で一番仲の良かった同期のAD2人からです。しかも、その内容が、「沖縄に行こう!休みとるから!お~い。香川~?」というもの。実は僕、その2人に、「会社辞めたら沖縄に行きたい!」「南国でゆっくりしたい」とずっと言っていました。その希望を叶える為に、僕が会社を辞めた翌日、メッセージを送ってきてくれていたのです。しかも、上司に言って、今年まだ取れていなかった夏休みを申請していました。結局、僕からの連絡が無かった為、沖縄旅行は無くなり、ラインの最後のメッセージは、「死んでたら悲しいからその前には連絡欲しい。」という言葉で終わっていました。

 この時の僕の心臓は、AD時代の比じゃないくらいに、震えていました。「どうしよう、、、やっちまった。」こんな言葉じゃとても表現できないくらいに、僕は、激しい後悔の念に押しつぶされそうになりました。同期のADの優しさに感動を覚えたと同時に、その優しさを裏切ってしまった自分自信に対して、大変失望し、自分の犯したこの過ちから逃げるように、無意識のうちに、スマホの電源を切り、ベッドの下に放り投げていました。当時の僕には、自分の犯した過ちを受け入れるだけの度胸はなく、その過ちから逃げる為に、再び、スマホを手放したのです。

 「そうだ、見なかったことにしておこう。スマホなんて、もともと持っていなかった。そう!持っていなかった。なんなら、制作会社になんて就職していなかったんだ。同期のADとも出会っていなかった。そうだ、僕は大学を卒業して、ずっと夢を見ていたんだ!そうしよう!そうしよう!そうしよう、、、、。」こう心の中で繰り返した言葉は、自分の過ちを受け入れきれず、その責任から逃げる為に、再び、同期のADの優しさを踏みにじるものでした。しかし、何十回、何百回とこの言葉を繰り返しても、制作会社で働いていた時の記憶は消えるわけもなく、同期のAD2人に対する罪悪感が膨れ上がる毎日でした。

 そして、その後は、スマホの電源入れ、次、同期のADから連絡が来たら返信しようとか、メッセージを書いても送信ボタンを押せずに、削除するというのを何度も繰り返す不毛な日々を過ごしていました。

 そうして、あっと言う間に、退職してから半年程経ったある日、親から、東京観光に行くからとの連絡がきました。そして、親が東京に来た日、約半年ぶりに人と会話をしました。レストランでの食事中、僕は元気な息子を演じていましたが、もう限界だと悟り、会社を辞めたこと、そして、半年間「ミッシング・ワーカー」をやっていたことを正直に話しました。すると、親は、「・・・そっか、いいんじゃない。なんとなく分かってた。」と、半年間黙っていたことを責めるわけでもなく、退職理由を聞くわけでもなく、優しく僕の決断を受け入れくれました。そして、社会復帰への一歩として、まずは、ハローワークに行くことを勧めてくれました。不思議なことに、この半年間、どんなにYoutubeで元気のでる洋楽集を聴こうが、スティーブ・ジョブズの演説を聴こうが、Netflixで「ショーシャンクの空に」を見ようが、社会に出ることが出来なかった僕が、たった一言「ハローワークに行こっか」と親が言ってくれただけで、社会復帰への一歩を踏みだすことができました。親の存在とその言葉の温かさに、大きく背中を押され、2018年4月、人生で初めてハローワークに行きました。こうして僕は、無事、「ミッシング・ワーカー」を卒業することができたのです。

~次回 「無職、ユニオンに出会う」~

【7月27日、28日】 自販機ベンダー業界で働く人のための労働相談ホットラインを開催します。

お知らせ
07 /20 2018
 7月27日と28日に、「自販機ベンダー業界で働く人のための労働相談ホットライン」を開催します。

 現在、団体交渉中のサントリーグループ自動販売機オペレーター大手のジャパンビバレッジが注目を集めています。
 同社は、事業場外みなし労働時間制を悪用した違法な長時間残業をさせていたとして、労働基準監督署より違法な長時間残業(労働基準法32条違反)と残業代未払い(労働基準法37条違反)に対する是正勧告を受けました。

 そして、本件がメディアによって報道されると、他の自動販売機オペレーターで働く労働者から相談が続々と寄せられてきました。
 「残業代が払われない!」「タイムカードを切ってから残業させられる!」「休憩が全く取れない!」など違法労働が業界全体に蔓延している実態が明らかになりつつあります。

 そこで、ブラック企業ユニオンは、自動販売機オペレーターで働く人を対象に、「自販機ベンダー業界で働く人のための労働相談ホットライン」を開催することになりました。
 ぜひ、お気軽にご相談ください。

日時:7月27日(金)18時~22時、7月28日(土)13時~17時
電話番号:0120-333-774
主催:ブラック企業ユニオン
※通話・相談は無料。秘密厳守。

 ホットラインでは、残業代の請求の仕方や違法な労働環境の改善の仕方など、働き方を変えていくための具体的な方法をアドバイスします。この機会にぜひご相談ください!

 なお、通常の労働相談窓口は、以下の通りです。ぜひご連絡ください!
電話番号:03-6804-7650
電話受付:平日17時~21時(水曜は休み)/土日祝13時~17時 
メール:soudan@bku.jp

ブラック企業ユニオン

ブラック企業ユニオンは、総合サポートユニオン(http://sougou-u.jp/)のブラック企業支部です。労働問題でお困りの方は、下記連絡先までお気軽にご相談ください!

〒155-0031
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