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エピソード2 「行方不明の労働者」 ~元テレビ番組制作会社ADの未払い残業代請求ストーリー~

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08 /03 2018
 2017年10月に株式会社A社を退職した翌日から、心身ともに疲弊していた僕は、最近話題の「ミッシング・ワーカー」になりました。「ミッシング・ワーカー」とは、求職活動をしていない為、ハローワークなどの公的機関が把握できていない失業者のことで、労働市場から行方不明の人を指します。日本語訳は、「行方不明の労働者」。

 「うん、、、なんか、かっこいい。」それが、僕がこの言葉を初めて聞いた時の感想でした。ニートより罪悪感がないし、響きもかっこいいので、失業中、僕はこの言葉に何度も救われました。間違いなく、僕の中の2018年流行語大賞です。

 こうして、会社を退職した翌日から「ミッシング・ワーカー」になった僕ですが、実はそれだけにとどまらず、ガチの行方不明になりました。AD時代、メールや電話に、いつでも対応できるように、常にスマホを握りしめていた僕は、スマホのバイブ音が怖くなっていました。バイブ音が鳴る度に、僕の心臓はそれ以上に震えていました。その結果、退職後、スマホの電源を切り、SIMカードを抜いて、ベッドの下に放り投げ、生活をしていました。視界にスマホが入ってこない。いつになってもスマホからバイブ音がしない。スマホから自由を勝ち取った僕は、好きな時に起き、好きな時に食べ、好きな時にネットをし、好きな時に寝る、そんな健康で文化的な最低限度の生活をしていました。しかし、今の日本では、それは行方不明になることを意味していました。

 あの日のことは、一生忘れないでしょう。そう、スマホを再び手に取った日です。実は、スマホから距離を置いて、1か月たった頃、僕の方からスマホのことが気になりはじめていました。あんなに嫌いだったのに。あんなに僕の心臓を震えさせていたのに。何故かそこには、あのバイブ音をもう一度聞きたい僕がいました。しかし、もうスマホに支配されたくない僕は、そこから意識してスマホと距離を置くことにしました。2017年の年末頃にはもう、嫌々、スマホの無い生活をしていました。そして、2017年12月31日大晦日、年越しのカウントダウンと同時に、僕は再びスマホを手に取ったのです。

 電源を入れてみると、大量のラインのメッセージが送られてきました。主に、前の会社で一番仲の良かった同期のAD2人からです。しかも、その内容が、「沖縄に行こう!休みとるから!お~い。香川~?」というもの。実は僕、その2人に、「会社辞めたら沖縄に行きたい!」「南国でゆっくりしたい」とずっと言っていました。その希望を叶える為に、僕が会社を辞めた翌日、メッセージを送ってきてくれていたのです。しかも、上司に言って、今年まだ取れていなかった夏休みを申請していました。結局、僕からの連絡が無かった為、沖縄旅行は無くなり、ラインの最後のメッセージは、「死んでたら悲しいからその前には連絡欲しい。」という言葉で終わっていました。

 この時の僕の心臓は、AD時代の比じゃないくらいに、震えていました。「どうしよう、、、やっちまった。」こんな言葉じゃとても表現できないくらいに、僕は、激しい後悔の念に押しつぶされそうになりました。同期のADの優しさに感動を覚えたと同時に、その優しさを裏切ってしまった自分自信に対して、大変失望し、自分の犯したこの過ちから逃げるように、無意識のうちに、スマホの電源を切り、ベッドの下に放り投げていました。当時の僕には、自分の犯した過ちを受け入れるだけの度胸はなく、その過ちから逃げる為に、再び、スマホを手放したのです。

 「そうだ、見なかったことにしておこう。スマホなんて、もともと持っていなかった。そう!持っていなかった。なんなら、制作会社になんて就職していなかったんだ。同期のADとも出会っていなかった。そうだ、僕は大学を卒業して、ずっと夢を見ていたんだ!そうしよう!そうしよう!そうしよう、、、、。」こう心の中で繰り返した言葉は、自分の過ちを受け入れきれず、その責任から逃げる為に、再び、同期のADの優しさを踏みにじるものでした。しかし、何十回、何百回とこの言葉を繰り返しても、制作会社で働いていた時の記憶は消えるわけもなく、同期のAD2人に対する罪悪感が膨れ上がる毎日でした。

 そして、その後は、スマホの電源入れ、次、同期のADから連絡が来たら返信しようとか、メッセージを書いても送信ボタンを押せずに、削除するというのを何度も繰り返す不毛な日々を過ごしていました。

 そうして、あっと言う間に、退職してから半年程経ったある日、親から、東京観光に行くからとの連絡がきました。そして、親が東京に来た日、約半年ぶりに人と会話をしました。レストランでの食事中、僕は元気な息子を演じていましたが、もう限界だと悟り、会社を辞めたこと、そして、半年間「ミッシング・ワーカー」をやっていたことを正直に話しました。すると、親は、「・・・そっか、いいんじゃない。なんとなく分かってた。」と、半年間黙っていたことを責めるわけでもなく、退職理由を聞くわけでもなく、優しく僕の決断を受け入れくれました。そして、社会復帰への一歩として、まずは、ハローワークに行くことを勧めてくれました。不思議なことに、この半年間、どんなにYoutubeで元気のでる洋楽集を聴こうが、スティーブ・ジョブズの演説を聴こうが、Netflixで「ショーシャンクの空に」を見ようが、社会に出ることが出来なかった僕が、たった一言「ハローワークに行こっか」と親が言ってくれただけで、社会復帰への一歩を踏みだすことができました。親の存在とその言葉の温かさに、大きく背中を押され、2018年4月、人生で初めてハローワークに行きました。こうして僕は、無事、「ミッシング・ワーカー」を卒業することができたのです。

~次回 「無職、ユニオンに出会う」~
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